column 建築エッセイ

長期優良住宅よりも、進化する住宅

長期優良住宅という言葉を聞いたことがありますか?

耐久性、耐震性や省エネ性、バリアフリーなど長期使用のために必要な条件や基準を満たした住宅のことです。「100年、200年住める住宅」というのが長期優良住宅の目指すところ。国は税制優遇まで行って普及させようとしています。

耐久性を高めた建築の長寿命化は価値あることです。

ただ、耐久性と機能性の向上だけでは建築物の長寿命化には不十分です。建築には芸術性や楽しさもなければ末長い建築的財産にはなりません。

建築は見る者使う者を和ませる芸術性があればこそ、メンテナンスをする意欲も湧く。価値があるからこそ修復を繰り返しながら長年受け継がれていくのです。

日本には奈良の法隆寺や正倉院などのように建築されてから何百年、千年と経過している建築物はたくさんあります。こういった歴史的建築物は、決して機能や耐久性だけで何百年も残ってきたわけではありません。価値が認められたから、生かされてきたのです。

住宅建築の長寿命化にとって「美しくて楽しい住宅」は大事なテーマです。毎日の暮らしが楽ければ、工夫が出る。もっと良くしたいと思う。想像力も湧き、愛着と時間が家を進化させます。新築時のスタートが美しくて本物であれば、その美しさと本物が増幅しながら家という建築も大きく進化していきます。

最初に作る核が大切です。長寿命化は大事ですが、耐久性には限度があります。進化できる価値ある建築を私たちはつくっていかなければなりません。