column 建築エッセイ

楽しい場所をつくりあげることが、建築家の仕事

吉田拓郎さんの「ah-面白かった」という歌がありますが、自身の最後を言葉に託したのでしょう。いろいろな辛いことも時にはあったでしょうが、乗り越えることもできた。そして楽しかったこともたくさんあった。何より精一杯全力で頑張った。「ah-面白かった」と言って終わりたい人生です。さすが拓郎さん、いい言葉です。

私たち建築家の仕事は、その「楽しかった」「面白かった」人生の舞台、場所をつくることだと思います。我ながら、やりがいだらけの仕事だと思っています。

「楽しい人生よりも機能的で合理的な人生の方が良い」という人は少ないはずです。

面白い建築、楽しい建築は、何も歴史的に有名な建築だけではありません。日常のあちらこちらや旅先でもみつけることができます。

例えば、ワイキキのヒルトン・ハワイアン・ビレッジは、ヨーロッパやアメリカのヒルトンとは違い気遣い無用の常夏空間です。飛び抜けた高級感はないかもしれませんが、ハワイ感満載です。沖縄のムーンビーチホテルでの休暇は、飾り気のないのどかな沖縄の楽園気分を味わえます。

また、ニューヨークのメトロポリタン美術館は美術品や博物品をエンターテインメント化していて凄い。途中、突如ひらけた大きなアトリウムに入るとエジプト文明の建物が壮大に再現され、足もとにはナイル川が流れる。そうして人の気分をいっぺんにエジプト文明にタイムスリップさせたところで、たった一つの小さな美品や壁画を見せるのです。壁画を見ることさえワクワクさせるのです。(衝撃的でしたので思い出がデフォルメされているかもしれません。)

30年もの昔、長崎に突如、中世のオランダの街並みができました。ハウステンボスです。今ではテーマパークとして有名ですが、その目指したところは壮大な環境未来都市つくりだったのです。その街には全長6Kmの運河がつくられ、その岸辺には生態系が形成され、周辺にはカフェやレストラン、ホテルや別荘がつくられました。森の奥には宮殿もあり、花と緑と水の都、憧れの街つくりだったのです。あっぱれです。

もうひとつ、楽しくて面白い建築と聞いて思い出すのは、やはりライトです。次項ではフランク・ロイド・ライトの話をしましょう。