column 建築エッセイ

家の中に滝を作ったフランク・ロイド・ライトの落水荘に学ぶ

建築について少し詳しい方なら、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトの「落水荘(らくすいそう・Fallingwater)」はご存知かもしれません。

近代建築3大巨匠の一人であり、日本の帝国ホテルなどの建築も手掛けている彼の代表作で、ペンシルバニア州の山に流れる自然の滝の上に建てられた落水荘はダイナミックで面白い。そもそも広々とした土地の中のわざわざ滝の上に家をつくる、という発想は普通の人にはありません。

ライトは最初に土地を見た時、オーナーに「この景色の中のどこに座りたいか?」と尋ねたそうです。「あの滝を眺めながら暮らしたい」との答えに、ライトは滝と一緒に暮らす「落水荘」を提案したのです。

(写真13.落水荘)写真を買う?

山のずっと上の方から流れてきた湧水は、カウフマン邸落水荘の中のリビングを流れぬけ、大きく迫り出したバルコニーの下から解き放たれるような滝となり豪快に下の小川へと流れ落ちる。

想いは家の中に小川や滝を流したかった、そんな発想が思い浮かびます。

自然に溶け込むでなく、自然を絶妙に活用した面白い建築です。

ライトには面白いエピソードがあります。

樹木のようなキノコのような柱がいくつもある、まるで森の木陰のような不思議な世界観の執務空間を持つジョンソンワックス社。落成式のパーティーは、たまたま雨だったそうですが、式の真っ最中に運悪く雨漏りがあり、事もあろうに社長の席へ雨水がポタポタと落ちてきてしまいました。

社長はすぐにライトに電話を掛け、

「この新築の建築は雨漏りがするぞ!私の席が水浸しだ!」と激昂。

しかし、ライトは平然と言ったそうです。

「それならその椅子を、少し横にすこしずらしてはどうかね?」と。

・・・・・・・・ちょっと変わった人ですよね?

真偽の程はともかく、このくらい変わった建築家でないと面白い建築をオーナーに提案し、実現へ向けて説得することはできないでしょう。 建築の新しい世界、名建築といわれるような価値ある建築は、ライトのように少々変わった建築家と少々変わったオーナーとの出会いがつくってきたのかもしれません。