column 建築エッセイ

建築家のプランは魔法のプラン

「あなたの鉛筆は「魔法の鉛筆」みたいですね」と私は、クライアントから何度か言われたとがあります。

先述のように私たちの描く平面図は、大の建築好きがそろう建築設計事務所で鍛えられた経験と、渾身のアイディアがぎっしり詰まっていますからね。

ありがとうございます。

私たちの鉛筆は魔法の鉛筆なのです。

設計を依頼される時、申し訳なさそうに、でもあらかじめ要望がびっしりと書かれた希望図面をオーナーから渡されることがあります。定規と鉛筆で書かれていることもあれば、何かのソフトで書かれていることもあります。

「何日も夢を見られたのだろう」と思うと、なるべく尊重したいと思います。

ですからその後、私が続けてプランを描いていく時には、「この書かれた図面、少し内容が変わっても大丈夫ですか?」と必ず聞くことにしています。

大抵の場合「この案にはこだわりません」と言われるが、私は最初に書いていただいたその希望図面の良いところを一生懸命探します。そしてその部分をキーにして新しいプランへと昇華させるのです。

建築のプランはどんな時にも無限にあります。他のアプローチならもっと別の案もあるかもしれませんが、オーナーが何日も一生懸命考えてくださった第一案を尊重して最高のものをつくることも、私たちの仕事の大切なことだと思っています。

そうやって私たちの魔法の鉛筆で、大きく方向性まで変えてバージョンアップされた、しかし当初の案の影も形もないプランになってしまうこともあるプランを持って、最初のプレゼンに望むのです。

そして出来上がった図面をぱっと広げる・・・・・

「うぁー凄い」と、オーナーの顔が明るくなれば成功です。

         「魔法の鉛筆みたい」

「GOTOマジックだ!」

「私の案を適当に無視してくれた素晴らしい案だ!」

「こんなところに住めるのですか?」

「こんな病院なら行ってみたい!」

「この店ならお客さんたくさんきそう、私も行きたい!」

「すごい!4階建てはできないと聞いてたのに」

「この家でもう一旗あげたい気分になりました」から

「リフォームしたら主人が早く帰ってくる様になりました」・・・・・・まで

これ、全て私がお客様から言われた言葉です。

「魔法の鉛筆」は「感動設計」なのです。