column 建築エッセイ

建物の投資利回りを5%でなく30%にする方法(6倍儲かる建築)

資産価値を考えるとき、投資利回りという考え方があります。

投資額に対して1年間でどのくらいの利益があるのか?という数字のことです。最近の利回りの相場で言うと5%から10%の間で事業化されることが多いようです。例えばマンション経営のために1億円の投資をしてマンションを建設したとします。この時の年間の家賃収入が1000万円だったとすると利回り(表利回り)は投資額(建設のための費用)の10%ということになり、「それなら建設しようか」となります。

ところがこの「利回りが何%か?」は建築をしようと決断するときの判断根拠として大きな問題であるにもかかわらず、利回りの数字の根拠はそれまでの経験の域を脱していません。

例えば家賃収入額の決め方は概ね単純で、賃貸する部屋の面積と近隣の面積あたりの家賃相場を掛けたものなのです。これから建てるマンションの評価は、既に建っている近隣のマンションやテナントビルの家賃を参考にします。そのマンションが本質的だとか、耐久性があるとか、美しいだとか、地域に貢献する建築だとか、そういったこととはあまり関係ありません。

そういったことをやったとしても入居率は変わらないからなのだそうです。

でも、10年後は違いますよね。30年後はもっと違いますよね。

それに入居者の給与が全員千円単位で同じだとも思えず、二千円家賃が高い、三千円高いから入居しないといったことと支払い能力とは一致ないのではないでしょうか?

相場と比べて安いか高いかの「損した感」の問題ではないでしょうか?

今後例えば、家賃の表現の仕方については、個室の数や大きさなどのほかに、ホテルのランク付けで行われている星4つ、5つなどの評価をつけるなど、建築的価値に沿った家賃設定法、できないものなのでしょうか?開発できないものでしょうか?

それから返済期間を20年間や30年間でしか考えないことはさらに大きな問題です。銀行などの融資者は返済期間35年の場合、当然35年での全額完済を求めます。しかし「価値ある建築」の利回り、返済は、100年単位で考えるべきです。なぜなら価値ある建築物は100年以上現役で収入を得ることができるからです。

そのことを考えると、建築費に対する融資額は増やすことができ、毎月の返済額も減り、もっと質の高い価値ある建築をつくれ、街が魅力的できれいになり何よりのS D G sなのです。価値ある建築をつくるには少しはお金がかかってしまうのです。社会を牽引する銀行などには、そういった制度改革をお願いしたいと思うのです。

 

一昔前、「日本の住宅はウサギ小屋だ」などといわれたこともありましたが、ウサギ小屋をつくるための一生では寂しすぎます。結局、今の融資制度が変わらない限り、本質的な建築つくりための資金を調達するのは、たとえ住宅の建築といえども至難の業です。

家を建てることはできたとしても、その30年や50年後に、子どもや孫が、また同じ金額をかけて同じような建物を、最初に建てた時同様に建てることになります。しかも、解体費と建て替えの間の仮住まい費用も用意しなければなりません。これは家の価値にはなりませんから、損失として受け入れることになります。

ローンを組み、ほぼ全財産をかけ、何代も,何代も同じような建物を永遠に壊してはつくり続ける。

それがこれまでの私たちの選択でした。これからもそうなっていくのでしょうか?

この繰り返し、無駄ですよね。

少し費用はかかっても、建築の力を信じ、100年、200年と残る建築をつくれたなら・・・・・?子どもや孫たちがそれを引き継ぎ、メンテナンス費用を負担するだけで住み続けることができるのです。そうなれば、私達日本人も今の何倍も何十倍も生活が豊かになるのです。

100年建築の考え方を土地の有効活用でつくるマンション建築に当てはめて見ましょう。

例えば先述の1億円を投資して作ったマンション。新築の20年後、譲り受けた子どもが新築時の建築費の約3割の3000万円の改修工事をし、毎年の家賃収入が同じ1000万円だとしたら(本当はは物価の上昇分家賃は上がるのですが・・・)、子供世代の利回りはおよそ33%、当初利回りの6倍以上になります。

しかも、手を加えられた建物は新築当時よりさらにアップグレードし、魅力的なオーラのある建築となっているはずです。20年後ですから、当然物価も上昇しているでしょう。その時に同じ設計で建築しようとすれば、建設費は1億3000万円にも1億5000万円にもなっているのかもしれません。

つまり20年後の子どもは、3000万円のお金で1億3000万円や1億5000万円の建物を手にし、毎年毎年1000万円の収入を得られる財産を譲り受けたことになるのです。

すごいことですよね。どうでしょうか?

もう、50年や60年で壊さなければいけないような建築物をつくりたいとは誰も思われないはずです。建築は少なくとも100年後の姿はイメージしなければなりません。

目標は1000年先を考えた1000年設計なのです。

もしも、投資利回りを100年単位で考えることができたなら、個人の資産価値が上がり、街がきれいになり、環境にも良くて魅力的なになる。

豊かになると人は優しくなり、人は元気に明るくなります。 そしてそれは建築ができる「建築の力」なのです。