column 建築エッセイ

なぜ法隆寺は1300年経っても美しいのか?

聖徳太子ゆかりの寺院、世界最古の木造建築としても知られ1993年に日本で初めて世界文化遺産に登録された奈良県にある法隆寺。

幾度かの落雷、火事に遭いながらも成長を続け、1300年経った今でも凛として美しい。その場に立つといっそう凄さがわかります。

「その昔、聖徳太子が背の高い木靴を履いてここを歩いていたのだろうか?」「聖徳太子が立っていたこの場所に今、自分がいる」こうした場の空気感ロマンは時間を超えるのです。

法隆寺は建築的価値が認められ、「残そう」という想いがあったから残ったのだと思います。長きに渡り木造技術を守り抜き力を尽くした宮大工たちがいたからこそ、1300年もの間、修復を続けることができたのです。

残す価値さえあれば、木造の建物は1000年以上でも残せる。しかし、30年しか残す価値がなければ30年で解体されます。

木造建築の良いところの一つは、部分補修を繰り返しできるところです。人の細胞が新陳代謝を繰り返すように木造建築も新陳代謝が得意なのです。

法隆寺へ行くことがあれば、回廊のところにある大きな柱を見てみてください。柱の下の部分は新しい柱に取り変えてあることがわかります。こうやって修復が続いているのです。鉄筋コンクリート造や鉄骨造ではこう簡単にはいきません。

残すに値する建築をつくることは最高の社会貢献なのです。

私(自分)だけの建築から、街への建築価値を尊重する。実はそれが私(自分)の建築の価値を高める一番の近道でもあります。