column 建築エッセイ

「建物は50年しか持たない」という間違った「常識」

「日本の住宅は30年が限界だ!」などとも言われ、 20年も経った住宅は「中古かぁ・・」という価値観になってしまいます。でも本当は、住宅は、20年30年どころか100年200年経っても現役でいることが可能です。しかも本来建築は、時間が経つほど価値が上がっていかなければいけないものなのです。パリの街並みの様に我が子そして孫へとつなぐ我が家はロマンチックです。これこそ本当のSDGsなのです。

ではなぜ、日本の木造建築の寿命は30年と言われることがあるのでしょうか?
データは、いろんな見方や解説がつくといろんな見方になります。

国土交通省の2015年「滅失住宅の平均築後年数の国際比較」の資料では、日本の住宅の平均寿命は32.1年でアメリカは66年、イギリスは80年と記されています。「日本の住宅の寿命は30年」といった説明の時に用いられるデータが載っています。
しかし、実はその「滅失住宅の平均築後年数の国際比較」の資料では当時何かの理由で壊された住宅の平均寿命をいっているに過ぎません。戦後まもない、まだ物が充分でなかった時代に建てられた住宅が力つき解体されたのかもしれません。あるいはまだ構造は大丈夫であったとしても急速な時代の変化の中で、躯体に隠れた水回りの配管が取り替えられない、間取りが使いにくい、天井が低い、などなど、機能的に問題があり構造はまだまだ大丈夫だったのに取り壊されたのかもしれません。とにかく何かの理由で「取り壊されてしまった建物」の平均寿命なのです。つまり、頑丈で壊されなかった「長生きしている住宅」の築年数は、カウントされてはいません。その当時に壊わされた住宅の平均寿命と本来の住宅の耐用年数とは違います。
また税法上における木造住宅の法定耐用年数は22年とされていて、そのことと併せて考えると日本の木造住宅はやっぱり短命なのだ。と思ってしまうのも仕方ないのかもしれません。

さらに「ヨーロッパは石造りの家なので長持ちするが、日本の住宅は木造なので寿命が短いのだという説明までつけ加えられること「なるほど、そうだ」と確信してしまうのです。
しかし、いくらイギリスやフランスといえどお城や集合住宅などは石造りや鉄筋コンクリート造かもしれませんが、一般の戸建の家の多くは木造住宅のはずです。

では、実際の建物の寿命はどのくらいあるのでしょうか?
早稲田大学・小松幸夫教授の「建物は何年もつか」(2011年)というレポートや、「建物の平均寿命推計」の最新調査(2011年)が参考になります。
丸めて言うと、これらに記されている木造の平均寿命は64年。そして「建築の寿命は木造住宅と鉄筋コンクリート造住宅での違いはない」とされています。

さらに国土交通省は、2008年に「住宅の寿命を延ばす「200年住宅」への取り組みに関するレポート」において、すでに「200年住宅」という概念を使っています。つまり「住宅は200年は持つべきだ」ということを国が考えているわけです。

ですから、住宅の寿命が30年ということはありません。少なくともたった30年しか持たない家は建てるべきではないのです。