column 建築エッセイ

使用権住宅だけが至高の住環境をつくる

土地の有効活用にと遊休地に賃貸の集合住宅を計画しようとすると、「駅から遠いから無理だ」とか、「街から遠すぎるから入居者がいない」という理由で断念することが多いと思います。

現在の不動産事情で言うと、住宅の価値は「駅近」で「築年数が新しいこと」がまず初めに来るので不便な場所ではN Gなのです。

一方、街中に夜中にピアノを練習したり、カラオケが歌えるようなアパートはそうそうありません。ペットを自由に遊ばせたいと思っても大体のマンションでは断られる。バーベキューをやれるような賃貸マンションなど見たこともありませんし、緑豊かな、カッコイイ賃貸住宅もそうそうはありません。便利な場所の建築はそれだけで十分なので、それ以上の建築としての価値を探す工夫や努力はできません。経済の論理で言えば余計なことになるからです。

だからそれ以上の住宅が駅近にはないのです。

しかしそのなかなかない建築をつくることができれば駅から多少遠い場所でも住みたい人はきっといます。これまでの建築が単に便利さと言う条件に負けていただけなのです。

知恵が足りなかったのです。雑巾を絞って、さらに絞って、もう一度絞って出ないとなった時にもう一度絞って、諦めかけた時に絞ったタオルをさらにもう一度絞ってでるくらいの知恵をこれまで絞ってこなかっただけのことなのです。死ぬ気で考えれば知恵くらいはでます。何事も私はそう思っています。

どこにもないものはどこにもないので、誰かはそれを探しながら待っているのです。

これからの賃貸住宅は暮らしが楽しくなる、カッコ良い建築にするべきです。理想の住環境をつくるのです。ケース1として少しだけ具体例を上げておきましたのでご覧ください。

最近は、車などはサブスクリプション方式を利用して、車を所有しない方が増えてきています。住宅も近い将来そんな時代になっていけば良いと思います。

こういう言い方は不適切かもしれませんが、低価格住宅などの登場によって本来であれば家を持てるほどの余裕がない世代でも家を持てるようになりました。 

「どうせ家賃を払うなら、将来は自分のものになる住宅を早く買った方が良いのでは?」と。

いいえ。その家賃の金額では、本当に価値ある建築をつくることはおそらくできません。しかも結局住宅ローンに追われ、嫌なことも我慢しながら借金を返済しなければならないという人生になってしまいます。そして人生が終わる頃に、子ども達はまた自分達で親世代と同じような家をまた建て直す事になります。住宅ローンが若い世代向けの設計になっているのでそうなってしまうのかもしれません。

私は家を建てることよりも、価値ある家で暮らし「建築の力」でより良い人生を歩むことを選んでほしいと思っています。価値ある家で暮らせば「人生力」がつきます。一角の財産ができたところで、人生の最後の財産としての本質的な家を建てて次世代に繋ぐのが、成功者の役目だと思います。それが「きれいな日本」ができていくきっかけとなるのです。

街に希望を与えられるような芸術的な住宅、時間が経てば経つほど価値が上がる建築をつくるにはやはりお金がかかります。

それをまず実践できるのが、いますでに土地を持っている地主の方々や、資産があり投資ができる方々なのです。本当に価値ある建物をつくることができれば、これまで何度も触れたようにその未来、その先まで資産価値ははかりしれないのです。

賃貸住宅は街の価値を高めます。

賃貸住宅は建築家主導でプランを進めていくことができるので、環境をも俯瞰した計画にすることができます。この本に書かれたすべての手法をフルに使い建築することができます。また賃貸住宅なら、住まい方に制限をかけることもできます。管理事務所が積極的であれば、住宅の周りに四季折々の花を咲かせることもできます。「自分の家なんだから、ここにゴミを捨ててもいい」といったいわゆる「ゴミ屋敷」問題も心配する事はありません。気がつくところはオーナーの一存でどんどんバージョンアップできることも賃貸住宅ならではの良いところといえるでしょう。

住む側にとっての所有権と賃貸住宅の大きな違いは、自分のものか?他人のものか?というところですが、多くの人は自分の財産が欲しいと思っているはずです。それは皆んな同じです。

そこで私が提唱したいのは「使用権住宅」と言う概念です。私は「使用権住宅」こそ理想の住まい方だと思っています。使用権住宅は、例えば、ゴルフ場の会員権や有料老人ホームなどを想像していただければよいと思います。入会金や保証金を支払うことで、その住宅を自由に使う権利はあるけれども、所有権はないということです。

ゴルフ場の会員権を持っているからといって

「あの3番ホールは俺のものだから、芝生は長めにする」

「私は黄色が好きだから、クラブハウスを黄色のペンキで塗る」

といったことはできません。

また、会員資格でプレーすることはできても、コースの順番を変更したり、あらかじめ決められた規則を破ってプレーすることはできません。

しかし、特別なお客様としてゴルフ場から丁寧に接してもらえるなど、会員にしかない特権はたくさんあります。また会員権を持っていることにはステータスがあり、その権利を譲渡することもできます。有料老人ホームなども同じような考えです。施設を使用する権利は生涯ありますが、所有権はありません。

実質は賃貸住宅とそう変わるものではないかもしれませんが、私の思う所有権住宅にはステータスがあり、財産のように入会金を誰かに引き継ぐこともできます。そのため、「借り物は嫌だ! 財産として子どもに残したい!」と言う思いを持つ方にも理解していただけるのではないでしょうか? 

常日頃から人にあっては宣伝、提案するのですがこのプロジェクトも未だ事業化には至っておりません。

新しいことって、本当に大変ですよね。

(写真36戸建住宅型マンション)

ケース1

まだ日の目を見ない生涯現役のための戸建て型マンション

使用権住宅

対象:生涯現役を目指す高齢者

管理:プロのお笑いがやる明るい管理

      ビジネスと生活をサポートするサポートルームがこの街のインフォメーションになる 人生にとって最も大切で、有意義であるべき高齢期。これまで一生懸命走ってきたから辿り着いた年齢。「生涯現役」はあのニーチェも言った最高の生き方です。そんな「生涯現役」のための高齢者が暮らしやすい明るい住宅環境を使用権型で運用する。